ニュースの概要
北九州市小倉北区のゆめマート小倉が、10月末に営業を終える見通しです。前身の丸和小倉店は、日本で初めて24時間営業を取り入れたスーパーとして知られ、夜間も買い物ができる売り場の先駆けでした。今回の閉店理由は店舗の老朽化とされます。長く地域の暮らしを支えた店が姿を消すことは、一店舗の営業終了にとどまりません。営業時間の長さを競った時代から、人手や建物の維持費、周辺の需要に合わせて店の形を選ぶ時代へ、小売業が移っていることを示す出来事です。
引用元: ゆめマート小倉が閉店へ 前身は国内初の24時間営業スーパー(Mainichi Shimbun)
分析・見解
24時間営業の価値は営業時間の長さから利用者の確かさへ移る
丸和小倉店が先駆けた24時間営業は、買い物の機会を広げ、働く時間や暮らし方が異なる人にも応える仕組みだった。店を一日中開けること自体が、競争力の表れだった時期もある。しかし現在は、夜間人口や来店数が限られる地域で、売り場と人員を保ち続ける負担が大きい。営業時間の長さだけでは、利便性を測れなくなった。
重要なのは、何時まで開けるかではなく、必要な商品を必要な時間に確実に買えるかである。深夜の需要が小さい店なら、営業時間を絞り、その分を品ぞろえや欠品防止に回す方が顧客の満足につながる場合がある。24時間営業の後退は便利さの否定ではなく、地域ごとに便利さを組み直す動きと見るべきだ。
老朽化は建物の問題だけでなく店舗網を選び直す契機になる
老朽化した店舗では、空調や冷蔵設備、給排水、電気設備の更新が必要になる。食品スーパーでは冷蔵・冷凍設備の不具合が商品の廃棄や安全管理に直結するため、修繕を先送りしにくい。建て替えには多額の費用がかかり、工事中の休業や仮店舗の確保も伴う。単に修理費と売上を比べるのではなく、今後の需要を踏まえて投資を回収できるかが判断の軸となる。
閉店は地域の買い物環境にも影響する。近隣に別の店があっても、徒歩で移動する高齢者や車を使えない人には代替にならないことがある。店舗の採算と地域に必要な機能は別々に評価し、閉店後の移動販売、宅配、近隣店との連携まで含めて計画する必要がある。
人手不足と電気代が深夜営業の採算を厳しくする
24時間営業を続けるには、深夜帯にも勤務する人を確保し、売り場の補充や清掃、防犯を維持しなければならない。人手不足が続くなかでは、深夜勤務の採用や交代要員の確保が難しい。さらに冷蔵設備や照明を長時間動かす電気代も重なる。夜間の売上だけを見て営業を決めると、廃棄、警備、設備保守を含めた費用を見落とす。
無人決済や遠隔監視は負担を減らす手段になるが、導入すれば人員が不要になるわけではない。商品の補充、年齢確認が必要な販売、機器の故障、緊急時の対応には人が要る。技術導入の効果は、夜間の来店数、扱う商品、周辺の通信環境を確認したうえで測る必要がある。
店舗の価値は売上に加えて地域の役割で測る
総合スーパーの再編では、売上規模だけでなく、食品を中心にした小型店へ転換できるか、宅配や受け取り拠点として機能するかも重要になる。建物の制約が大きければ、既存店への追加投資より、別の場所に小規模な店を設ける方が地域の需要に合うこともある。閉店を避けること自体が目的ではなく、地域に必要な機能を、無理なく続けられる形で残せるかが問われる。
ゆめマート小倉の前身が示したのは、営業時間を延ばすことで暮らしを支える小売の可能性だった。これからの店舗は、営業時間、売り場面積、有人対応を一律にそろえるのでなく、商圏の人口構成や交通手段に応じて組み合わせるだろう。歴史ある店舗の閉店は、過去の成功をそのまま維持するのではなく、その価値を次の形へ引き継ぐ必要性を浮かび上がらせている。
ビジネスへの影響
店舗ごとの採算を営業時間別に分けて確かめる
経営側は店全体の売上だけで判断せず、時間帯別の売上、粗利益、人件費、電気代、廃棄額を並べる必要がある。特に深夜帯は、売上があっても勤務人数や警備費を差し引くと利益が残らない場合がある。曜日や季節による差も確認し、一律の営業時間短縮ではなく、需要のある日だけ延長する選択肢を検討したい。
判断には来店客数だけでなく、買い上げ点数や商品の種類も役立つ。深夜に少額の飲料購入が中心なのか、食料品のまとまった需要があるのかで、必要な売り場や人員は異なる。まず数週間から数か月の記録を取り、営業時間を試験的に変えた場合の売上移動も測る。閉店や短縮によって近隣店へ需要が移る可能性まで含めれば、店舗網全体での判断ができる。
建て替え費用と地域の買い物手段を同時に比べる
老朽店への投資を検討するときは、修繕、全面改装、建て替え、閉店後の代替策を同じ期間で比較する。工事費だけでなく、休業中の売上減、冷蔵設備の更新、将来の光熱費、建物の維持費を含めることが大切だ。投資回収の見通しが立たない場合も、即座に撤退と決めず、小型化や売り場の絞り込みで固定費を下げられるかを確かめる。
同時に、徒歩圏に住む人の年齢や交通手段、周辺の食品店、公共交通の便を把握する。閉店の影響が大きい地域では、宅配の対象拡大、注文品の受け取り、移動販売、自治体や近隣事業者との連携を比較する。支援策は実施後の利用者数や配送費も点検し、善意だけに頼らず継続できる運営にする。
技術投資は夜間の人員をゼロにする前提で組まない
セルフレジや遠隔監視を導入する場合、機器費用、通信費、保守契約、故障時の駆け付け体制を含めて採算を計算する。無人化を前提にすると、商品補充や本人確認、急病・事故への対応が抜け落ちやすい。まず対象時間や売り場を限定し、利用率と問い合わせ件数を記録するのが現実的だ。
技術は人を置き換えるだけでなく、限られた人員が複数の仕事を担えるようにする道具として設計したい。店舗の改装計画と採用・勤務計画を別々に進めず、何を機械に任せ、どの場面に人の判断を残すかを先に決める。その方針が定まれば、深夜営業の継続、時間短縮、小型店への転換を、同じ基準で比べやすくなる。
