ニュースの概要
100円ショップを展開するワッツが、大阪市東住吉区のスーパー玉出駒川店の2階に「ワッツウィズ 駒川スーパー玉出店」を開いた。台所用品、掃除・洗濯用品、文房具、インテリア雑貨、モバイル関連商品など、税込110円を中心とした価格帯の品ぞろえである。特徴は、スーパーの共通レジで会計できる点だ。食料品を買うついでに日用品もそろえられ、買い物の手間を減らしながら、客の「ついで買い」を促す狙いがある。独立した路面店ではなく、スーパーの建物の中に入るインショップ型の出店となる。
引用元: ワッツ、スーパー玉出内に100円ショップを出店(PR TIMES(ワッツ公式発表))
分析・見解
共通レジが「別の店へ行く手間」をなくす
100円ショップは、これまで目的を持って足を運ぶ店だった。スーパーで食材を買い、別の建物へ移って日用品を探す。この二度手間が、客にとって小さな負担になっていた。今回の店はスーパーと会計を共通にしたため、かごを分けて並び直す必要がない。
買い物の流れが一本につながると、客は「100円ショップに行く」と決めなくても売り場へ向かう。スポンジ、電池、ゴミ袋のように、来店の理由としては弱い消耗品ほど、この効果は大きい。
スーパーが2階を貸す本当の理由は滞在時間
スーパーが上階にテナントを入れる狙いは、賃料だけではない。食品スーパーは1品あたりの利益が薄く、客数と買い上げ点数で稼ぐ商売である。日用品の売り場が上の階にあれば、客は階段やエスカレーターを使って店内を回る。滞在時間が延びれば、帰りがけに食品を追加で買う機会も増える。
1階は生鮮食品が主役で、売り場を広げにくい。そこで上階の空きを、集客力のある専門店で埋める。スーパーは空きスペースを収益に変え、専門店は人の流れを借りる。双方に得がある組み合わせである。
税込110円を軸にした中堅チェーンの生き残り方
100円ショップは、価格を据え置く時代を終えている。原材料や物流の費用が上がり、110円を基本に、より高い価格の商品を混ぜる構成が一般的になった。業界にはダイソー、セリア、キャンドゥといった大手が並ぶ。中堅のワッツが大型店で正面から競うのは難しい。小さな売り場をスーパーの中に差し込む形は、その事情によく合っている。
品ぞろえも広がった。充電ケーブルなどのモバイル関連商品は、かつて家電量販店で買う品だった。急に必要になった物をその場で手に入れられる便利さは、スーパーの買い物客にとって大きな価値になる。
勝負は商品の安さより、客の通り道の取り合いに移る
独自の視点として挙げたいのは、小売の競争が「何を安く売るか」から「どの通り道に店を置くか」へ移っている点である。コンビニが公共料金の支払いや荷物の受け取りを担い、来店の理由を増やしてきたのと同じ考え方だ。共通レジは、客の財布を一つの出口に集める仕組みでもある。
玉出は価格の安さで知られるスーパーで、値段に敏感な客層と100円ショップは相性がよい。一方で課題も残る。売り場を見つけやすくする案内、混雑時のレジ待ち、商品補充の役割分担などは、運営が始まってから差が出る部分である。
ビジネスへの影響
小売業は空きスペースを「集客装置」として見直せる
今回の事例から言えるのは、空き区画を単に貸すか遊ばせるかの二択で考えなくてよいという点である。客の来店目的が違う店を同じ建物に置くと、お互いの客を回し合える。食品、日用品、薬、サービスなど、組み合わせの相性を先に考えてから、テナントを選ぶとよい。
評価の物差しも変わる。賃料の高さだけでなく、テナントが運んでくる来店頻度や買い上げ点数の増加分で比べる。
導入側が決めておくべき運営の細かな約束事
インショップ型は、共通レジの便利さと引き換えに、運営の取り決めが増える。売上の按分方法、レジ担当者の教育、万引き対策、閉店時間の統一、商品の補充担当などを、契約前に文書で詰めておきたい。
とくに共通レジは、客から見て一つの店でも、中身は二つの会社である。返品や問い合わせの窓口が曖昧だと、不満はスーパー全体の評価に跳ね返る。
他業種でも使える「ついで買い」の設計
小売以外の事業者にとっても、示唆は多い。自社の客が来店前後に必要とするものを書き出し、それを他社と組んで同じ導線に置けないかを考える。たとえば、美容室と雑貨、整骨院と健康食品、学習塾と文具のような組み合わせである。
まず小さな区画で試し、客の滞在時間と追加購入の変化を数えるのが現実的だ。数字で効果を確かめてから、広げるかどうかを決めたい。
