ニュースの概要
イオンの営業利益は過去最高を更新する見通しだが、スーパー事業は赤字で、傘下約760店のうち3割が苦境にあると報じられた。同社は不採算店を中心に約100店の閉鎖に動くという。イトーヨーカ堂が店舗を絞り込んだ流れに続く動きで、国内の総合スーパーが構造的な転換点にあることを示している。全体の利益は金融や不動産などの他事業が支え、本業の食品や日用品を売る店の採算は悪化したままだ。好決算と大量閉鎖が同時に起きる、一見ちぐはぐな姿が今回の特徴である。
引用元: ヨーカドーの次はイオン...営業利益は過去最高もスーパー事業は赤字 傘下760店の3割が苦境、約100店閉鎖へ(J-CAST ニュース)
分析・見解
過去最高益と赤字事業が同居する二層構造
イオンは、スーパーだけを売る会社ではない。銀行や保険などの金融、ショッピングセンターを運営する不動産事業、ドラッグストア、海外事業まで抱える複合企業である。このため、スーパー事業が赤字でも、グループ全体の利益は過去最高になり得る。
ここで見落としたくないのは、黒字の稼ぎ頭が、赤字の店を間接的に支えている点だ。専門店の家賃収入や、カードの手数料が、売り場の赤字を埋めてきた。この構造が長く続いたからこそ、店の整理が後回しになってきたともいえる。
3割が苦境という数字が示す店舗の老朽化
約760店の3割といえば、200店あまりになる。その多くは、1970年代から1990年代に郊外へ出店した大型店とみられる。建物は古く、空調や冷凍設備の更新にも多額の費用がかかる。
人口の動きも逆風になった。かつて家族連れで賑わった住宅地は高齢化が進み、週末にまとめ買いする客が減った。広い売り場と大きな駐車場は、客が減るほど固定費の重荷になる。売上が1割落ちるだけで、人件費と光熱費の比率が跳ね上がり、利益が一気に消える。
ヨーカドーとの違いは閉鎖の速度ではなく残し方
イトーヨーカ堂は、不採算店を閉じ、衣料品から撤退し、食品に軸足を移してきた。同社は事業の分離にまで踏み込んだ。一方でイオンは、閉めるだけでなく、残す店を作り替える方向を重視している。
具体的には、生鮮の産地直送、冷凍食品の強化、病院や保育施設の誘致、ネットスーパーの配送拠点化などが挙げられる。店を単なる売り場ではなく、地域の生活拠点に変える考え方である。ただし、これには改装費がかかる。約100店の閉鎖は、その投資の原資を作る意味も持つ。
見えにくい競合はドラッグストアとディスカウント店
総合スーパーの客を奪っているのは、同業の大手だけではない。食品を安く売るドラッグストアや、郊外の安売り店が、日常の買い物を細かく切り崩している。薬、日用品、食品を一度に買える利便性は、総合スーパーの強みだったはずだ。
ここに、人手不足による賃上げが重なる。値上げで客離れが起きれば、さらに安い店へ流れる。この悪循環が、過去最高益の陰で現場の苦しさを増している。今後は、価格競争より、品揃えの独自性と買い物の手間の少なさで勝負が決まるだろう。
ビジネスへの影響
取引先と物流は閉鎖店の穴を早めに織り込む
メーカーや卸にとって、100店の閉鎖は無視できない。1店あたりの年間取扱高が数十億円規模の店もあり、集まれば大きな売上減になる。自社の売上がイオン向けにどれほど偏っているかを、今のうちに店舗単位で洗い出すべきだ。
同時に、残る店と新業態の店は、棚の入れ替えが活発になる。新商品や地域限定品を提案できるメーカーには追い風となる。閉鎖と強化が同時に進むため、取引先は縮む部分と伸びる部分を分けて計画を立てる必要がある。
地域の事業者は跡地と客の動きを先読みする
大型店が閉まると、その周辺の飲食店や小売店にも影響が出る。人の流れが変わり、客足が落ちる店もあれば、近隣の別の店に客が移って伸びる店もある。商店主や不動産オーナーは、閉店の時期と跡地の活用予定を、自治体や関係先から早く聞き取りたい。
跡地が物流倉庫や医療施設、住宅に変わる例は各地で増えている。新しい人の流れを読めば、出店や移転の好機にもなる。
自社の看板事業の稼ぎ方を点検する習慣を持つ
今回の件は、他社にも教訓がある。好調な部門が不調な部門を覆い隠していないか、定期的に事業ごとの採算を見直すことだ。全体の利益が過去最高でも、中身を割ればまったく違う姿が見える。決算の見出しに安心せず、拠点別、商品別に利益を確認する習慣が、遅れない判断につながる。
