ニュースの概要
イオン傘下の小型スーパー「まいばすけっと」が、都市部で出店を加速している。2025年度末で1,300店を超え、2030年度までに2,500店とほぼ倍増させる計画だ。売り場面積は約50坪、約165平方メートルと小さい。それでも1店舗あたりの1日平均売上高は約72万円で、大手コンビニチェーンを上回る水準とされる。コンビニのように家の近くにあり、価格は食品スーパーに近い。この組み合わせが、物価高で財布のひもを締める消費者に支持されている。大型店を郊外に建てる従来型の発想とは逆に、住宅街や駅近くの狭い土地に小さな店を数多く置く戦略が、成長の柱になっている。
引用元: イオンのまいばすけっと、都市型小型スーパーを拡大(BigGo Finance)
分析・見解
50坪で72万円を売る店は、何が違うのか
まいばすけっとの1日平均売上高は約72万円とされる。コンビニの日販は、大手でも60万円台前半から後半という水準が一般的だ。つまり、コンビニより小さいか同程度の広さで、より多く売っている計算になる。
差を生む最大の要因は、品ぞろえの絞り込みである。主力は生鮮、総菜、日配品(=牛乳や豆腐など毎日使う食品)、そしてイオンのプライベートブランド(=自社企画商品)だ。たばこ、宅配の受け取り、コピー機のような手間のかかるサービスは最小限に抑える。レジ前の滞在時間を短くし、買い物を早く終わらせる設計になっている。
価格は大型スーパー、距離はコンビニという位置取り
コンビニは便利だが、同じ商品でも定価販売が中心で割高になりやすい。一方、大型スーパーは安いが、車や自転車で行く手間がかかる。まいばすけっとは、この二つの間にある空白を埋めた。歩いて数分の場所で、スーパーに近い価格が手に入る。
物価高が続くと、消費者は「安さ」を求めつつ、買い物の回数は減らしたくないという矛盾した行動を取る。毎日少しずつ買う人にとって、近くて安い店は理屈抜きに強い。単身世帯と共働き世帯が増える都市部では、まとめ買いより「その日に必要な分だけ買う」習慣が定着している。この変化が、小型店の追い風になっている。
密集して出店するほど、物流費が下がる仕組み
小さな店を数多く出すには、商品を運ぶ費用を抑える工夫が欠かせない。まいばすけっとは、同じ地域に集中して出店する手法(=ドミナント戦略)を取る。配送トラックが一回の巡回で多くの店を回れるため、一店あたりの運送費が下がる。
この方式には、もう一つ利点がある。店が近接していれば、店員の応援や商品の融通がしやすい。欠品や廃棄ロスを減らせるため、利益率の改善につながる。出店するほど効率が上がる構造であり、後発の競合が追いつきにくい理由でもある。
2,500店計画の落とし穴と、先行事例が示す教訓
出店の加速には危うさもある。同じチェーンの店同士で客を奪い合う「共食い」が起きれば、一店あたりの売上は下がる。さらに、人手不足と家賃の上昇は、都心の小型店にとって重い負担だ。
過去には、都市型小型スーパーを急拡大して失速した例もある。成長の鍵は、店数そのものではなく、一店あたりの売上と利益を保てるかどうかにある。2,500店という数字は、立地選びの精度が問われる賭けでもある。
ビジネスへの影響
小売業以外にも通じる「小さく、近く、絞る」発想
まいばすけっとの成功は、商圏(=客が通える範囲)の小ささを弱みでなく強みに変えた点にある。飲食、ドラッグストア、クリーニング、さらには医療や介護の分野でも、同じ考え方は使える。大きな一店に全部を詰め込むより、小さな拠点を生活圏に密集させた方が、顧客との接点が増え、運営も効率化しやすい。
自社の事業で、顧客が移動に使っている時間と手間を数えてみるとよい。そこに、小型拠点を置く余地がある。
出店判断で見るべきは、売上より「回転の効率」
新しい拠点を検討する際、多くの経営者は想定売上を最初に見る。だが、まいばすけっとの強さは、配送と在庫の回り方にある。拠点が増えるほど一拠点あたりのコストが下がる設計かどうか。ここを先に確認したい。
具体的には、次の三点が判断材料になる。既存店との距離と客の重なり。物流や仕入れを共有できるか。店員一人あたりが受け持つ業務の幅。この三つが整えば、小型でも利益は出る。逆に、どれか一つでも欠けると、店数の増加は赤字の拡大になりかねない。
物価高の局面では、価格の安さと近さを同時に示せる事業者が選ばれやすい。自社の価値を「安い」「近い」「早い」のどれで語れるか、いま一度整理しておきたい。
