ニュースの概要
イオンは埼玉県で「イオン川口東XD」を本格的に動かし始めました。低価格の小型スーパー「まいばすけっと」だけを担当する物流センターです。最初は約200店舗に商品を送り、将来は約350店舗まで対象を広げる計画です。倉庫内の作業を自動化し、店舗への納品の効率と現場の生産性を高める狙いがあります。まいばすけっとは売り場が狭く、働く人も少ない店です。そのため、欠品を出さずに必要な商品を必要な量だけ届ける仕組みが、そのまま店の競争力になります。今回の稼働は、都市部で小型店を増やし続けるための土台づくりと位置づけられます。
引用元: イオン、「まいばすけっと」向け自動化物流センターを本稼働(食品産業新聞社ニュースWEB)
分析・見解
小型店は「在庫を持てない」から物流が主役になる
まいばすけっとの店は、駅近や住宅街の小さな区画に入っています。売り場も裏の倉庫も狭く、大型スーパーのように在庫を厚く抱えることができません。棚が空けば、そのまま売り逃しになります。
つまり小型店では、店の裏側に在庫の置き場がない代わりに、物流センターが「店の巨大な backroom(=裏の倉庫)」の役目を担います。センターでどれだけ正確に仕分け、どれだけ細かく届けられるかが、棚の品ぞろえを決めます。
専用センターにする意味は、仕分けの型をそろえられること
複数の業態を一つのセンターで扱うと、荷物の大きさも納品の時間帯もばらばらになります。まいばすけっと専用にすれば、商品の入れ方、かごの大きさ、店での並べ順まで、すべてを一つの型にそろえられます。
型がそろえば、機械に任せやすくなります。ピッキング(=注文に合わせて商品を集める作業)を自動化しやすいのは、扱う荷姿が決まっているからです。汎用のセンターより、専用の方が自動化の効果が出やすいのです。
セブン-イレブンが専用の工場と配送網を一体で整え、店舗数の拡大に合わせて広げてきた歴史と重なります。店が増えるほど、物流の専用化は強みになります。
約200店から約350店へ、段階的に伸ばす理由
最初から350店を想定せず、まず200店規模で動かす設計は理にかなっています。自動化設備は、作業量が増えるほど一件あたりの費用が下がります。ただし、立ち上げ直後は不具合や運用のくせが出やすい時期です。
200店で仕組みを固め、残りの余力を新規出店に回せば、設備を遊ばせずに済みます。出店が増えても、物流の追加投資を小さく抑えられます。この「余力を先に作っておく」考え方が、出店のスピードを支えます。
見落とされがちな視点は、人手不足が店の出店場所を決めること
物流の自動化は、倉庫の中だけの話ではありません。センターの作業が楽になれば、店舗側の検品や補充の手間も減らせます。バックヤードが狭くても回る店は、家賃の高い都心の小さな区画にも出店できます。
つまり物流の自動化は、出店できる場所の選択肢を広げます。人を増やせない時代に店を増やす鍵は、店の中ではなく、店の外の仕組みにあります。その意味で、この投資は物流費の削減策というより、出店戦略そのものだと言えます。
ビジネスへの影響
小売業は「店を増やす前に物流を整える」順番で考える
店舗網を広げたい小売業にとって、今回の事例は順番の大切さを示しています。出店を先行させると、配送の本数が増え、欠品や遅れが起きやすくなります。結果として、店の評判と売上を同時に落とします。
中小のチェーンでも、まず自社の配送のどこに無駄があるかを洗い出すことが出発点です。たとえば、納品時間の集中、仕分けの手作業、店ごとの注文のばらつきなどです。大きな自動設備でなくても、かごの規格をそろえる、納品の曜日を整えるなど、型をそろえる工夫から始められます。
メーカーや卸は、専用センターに合わせた納品条件を見直す
取引先のメーカーや卸にとっても影響があります。専用センターは、商品の入り数や箱の大きさ、納品の時間枠を細かく決めて運用するのが普通です。条件に合わない荷姿は、機械で扱えず、手作業に回されて割高になります。
これから取引を広げたい企業は、自社商品の箱の寸法やバーコードの付け方が、自動化された現場で扱いやすいかを確認しておくとよいでしょう。条件に合わせられる企業ほど、採用されやすくなります。
投資判断では、設備費より稼働率と拡張余力を見る
自動化の投資を検討するときは、設備の値段だけでなく、どれだけの店舗数を支えられるかで考えます。今回のように、先に余力を持たせた設計は、出店計画とセットで初めて回収できます。経営者は、機械の性能より、自社の出店計画と物流能力の差を数字で並べて見るのが実用的です。
